北と日記

大学院生の多趣味奮闘日記

金沢に何があるじゃろな

 金箔ソフトクリ~ム~(水田わさび声)。


Gold Leaf Ice Cream


 金沢の新しい名物、金箔ソフトクリームである。金箔は見せかけではなく、勿論本物の金だ。口に入れても味を感じない。その代わり、料理の豪華さを演出する。高校化学で習うが、金は、非常に安定した金属であることで知られている。腹の中に入れても、胃酸程度で化学反応を起こさないため、そのまま体外へ排出される。高価な金属である金が下水に流されるという事実に勿体なさを感じる。金沢市の公衆便所で排泄物を適切に処理すれば、金を回収できるかもしれない。

 新幹線等を利用して、関東周辺部や、稀に青森、関西に遊びに行くことはあっても、北陸は一度もなかった。北陸、石川県金沢市には知り合いが二人住んでいる。1人は中学からの腐れ縁で、このブログを見ているであろう友だちも知っている人物。もう1人は、大学1年生の頃に同じ学生会館(寮のようなもの)にいた友人だ。彼とは3年、一度も会っていなかった。人づてには聞いていたが、彼にも色々ドラマがあって、地元に帰っているらしい。


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 日曜日、石川県の金沢市に到着した。東京方面からだと、北陸新幹線を利用するのが便利だが、前日は京都にいた。近江塩津駅での乗り換えが億劫で、30分待たされる上、あの駅はなぜか金沢よりも寒く感じる。大半の旅客は金をケチらずに特急を利用する。悠々と鈍行列車を抜かしていく車両を指を咥えて見送った。凍えるので、すぐにポケットに手を入れる。随分待たされてようやく2両編成の車両が到着する。

 石川県までは、一旦福井県を経由する。福井駅で降りてソースカツ丼を食べるのも良い。青春18切符を利用する旅は、時間が許す限り自由だ。今回はソースカツ丼はパスすることに決めた。


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 彼とのLineでのやりとりによると、15時までは仕事があるようだった。時計を見るとあと3時間もある。迷ったが、金沢を観光することに決めた。金沢在住の別の友人に訪ねた所、駅周辺の観光地は、近江町市場や金沢城六義園等が良いという。Google Mapsで調べると、観光地が密集している場所があった。ここにするか。特に迷うこともなかった。目的地までは、駅前からバスが出ているようだった。

 まちバスは平日の料金よりも割引されていた。たった100円で徒歩30分の距離をワープできる。初めは歩こうかと迷っていたが、それならばと来たバスに乗り込んだ。一緒に乗っていた観光客たちは、ほとんどが近江町市場で下車していた。ここで昼食を食べることもできる。


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 バス停から細い道を抜ける。1600年代から残るという鞍月用水を通り過ぎる。暫く水の音を聞いてみる。この用水路は、菜種油を採る目的や灌漑用に作られたと考えられている。時間がある時に、用水路を上流に向かって辿ってみるのも面白いかもしれない。きっと、ロクでもないような場所に辿り着く。

 年末ということもあって、旅行客は少ない。


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 長町武家屋敷跡は加賀藩の中級武士の住居跡であるが、特殊な遺跡だ。土塀や長屋門は昔の姿のままである。しかし、現在も市民生活が営まれている。観光客は土塀の間に引かれた路地を散策し、外側から住まいを眺めることができる。弊の中に侵入してしまうと、そこは個人宅である。ここで茶屋を開いたり、食器店を経営している個人宅もある。食器店では、全国各地の焼物の器が並ぶ。

www.nagamachi-bukeyashiki.com


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 武家屋敷跡の中で唯一、野村家は土弊の内部を見学できるらしい。俄然、昔の武士の住まいに興味が湧いてきた。そろそろ昼食をどうしようかと迷っていたけど、旅の間は思いつきで行動してみるのも良い。


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 玄関口の料金所で入場料を払う。550円と交換で、案内文のついたパンフレットを受け取った。靴は脱いで下駄箱に入れる。玄関では、かつて使用されていた鎧が飾られている。頬当の上にある空洞の目が侵入者を睨めつけていた。礼をするように下げていた顔を上げた。なんとなく、目の前に座る兜の形状に見覚えがあった。ガラスの中に閉じ込められている鎧に近づいて観察する。ある人物を想起した。スターウォーズ暗黒卿ダース・ベイダーだ。ベイダー卿のヘルメットと日本の武士の兜の形はよく似ていた。

www.nomurake.com


Tatami (straw and rush mats)


SAMURAI residence.


 障子や襖を開け閉めできるともっと楽しいと思う。


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 異国の人間にとって日本家屋は物珍しいと思う。日本人でさえ、東京での5畳の暮らしに慣れてしまっていては、畳の感触は新鮮だ。それに、日本には庭に池を持つ一軒家は少ない。手入れが大変そうだ。ずかずかと屋敷の中に上がると、なんと立派な仏壇が備わっている。その横には山水画が飾られている。あちらには書院造りの部屋がある。海外から来たと思わしき旅行者の連れ子が泣き出した。家の暗い雰囲気を怖がったのかもしれない。古い日本家屋は、どこか生き物のように感じる。晴れの日は、もう少し活き活きしているだろう。

 日が陰っているからか、庭園の景色はいまいち冴えない。池には錦鯉が泳いでいるらしい。水面を見下ろすと、鈍い色の魚影を隅の方で見つけたが、固まって動かなかった。


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 生まれて始めてみた日本刀はとても美しかった。鈍く輝く刃はまるで作り物のようだ。刀剣には1つ1つ銘がある。量産されたなまくらとは異なる。触ってみたい、が、ガラスの向こうにある脇差には指一本触れることは敵わない。


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 そうこうしているうちに待ち合わせ時間が来てしまった。武家屋敷の他にもチェックしていた観光地がいくつかあった。中でも楽しみにしていた金沢21世紀美術館は、不運なことに、年末の休暇をとっていた。止む無し、駅に戻ると、友人から「寝坊したので少し遅れる」というメッセージが届いた。今回会う人間は二人いる。一人は冒頭に書いた金沢在住の友人Nで、もう一人は現在埼玉に住んでいる別の友人T。Tとは以前高尾山を一緒に登った。駅の柱にあったベンチに腰掛け、英単語帳を開いてぼうっと時間を潰した。暫くすると友人Nが駅に到着し、Tが来るまで近況を話し合う。彼はうまいことを仕事を見つけて何とか暮らしているらしい。


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 ぶり大根。遅刻した友人Tが到着し、三人で食事をした。Tのリクエストで寿司屋を探すことにした。Tは北海道出身であり、自分もNも同じ北海道の大学を卒業しているので、北の幸と食べ比べだという話になった。年末なので目ぼしい店は休業していた。いろいろ調べて、結局、にぎり小屋 眩歓という店に行くことにした。スマホを片手に、空に高く上がった月を見ながら何とか辿り着いた。

 おそらく、家族経営の店舗だった。おそらくは。盗み聞きした会話の内容では、料理を運んでいる娘さんの年齢は20代のようで、自分たちとそれほど変わらない。愛嬌があって可愛らしい人だった。料理を運んできた際、カメラを見て「高そうなカメラですね」と聞かれ、このカメラはめちゃくそ高いけどインスタ映えするぞということを伝えると、料理の写真を撮って、ぜひ宣伝して欲しいと言われた。テーブルにどんと鮪の中落ちが置かれ、スプーンで料理を突いた。


genkan036.gorp.jp


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 せっかくだし、娘さんの顔を、料理と一緒に写してみるのもいいかなと思った。しかし、変な所で遠慮して、結局越えはかけなかった。Nが鮪の中落ちから肉を削り取るのに苦労して、Tが皿を押さえてスプーンの動きを助けていた。目の前のアラ汁を飲み干して明日のことを考える。旅程はとくに組んでいなかった。幸いなことに、今日の宿であるゲストハウスは予約できていた。

 お腹が減っていたので、料理はぺろりと食べてしまった。金沢の地酒も色々あるらしい。この日、どんな日本酒を飲んだのかはもう覚えていない。

(了)

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